ネコヤマンガ

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大吉原展に行ってきた感想Impressions of going to the Yoshiwara exhibition

正直まったく期待していなかったけど、予想通りの展示内容だったけど、田中優子氏が、展示の冒頭でどのようなコメントを出したのか、ワタシはその数行を見たかった。そのため、わざわざ札幌から参ったがしかし、およそ期待した通りの展示内容にワタシは今、そぞろ悲しい気持ちを禁じ得ない。

 

男の絵師たちが男のプロデューサー「蔦重」こと蔦屋重三郎(当時の秋元康みたいなもんだとワタシは思う)の指南で描いたきれいなハイレベルな遊女たちの浮世絵がズラーッと並び、3時間でも足りないくらい。老若男女、その展示を惚れ惚れ見ていた。まるで200年前の吉原の仲の町通りと、同じ光景であろう。

 

ファッション雑誌の、きれいな服装のお姉さんたちの、巻頭特集だけを見ているようで、彼女の舞台裏の恐ろしい性病の話や、避妊方法の話、借金の金銭的な話、あれやこれやまったく触れられておらず、あぜんとした。

 

あれでは、ただただ200年前などと同じように、女性を男性社会の犠牲にしていることにちっとも気づかず、気づいていても何とも思わず、男性目線の視点で、「江戸文化って粋でおしゃれで素敵ねー」と、江戸文化のライトなファンを増やすだけではなかろうか。

 

その精神性を以てして、現在の秋本康のAKBや、ジャニーズJr.への性加害問題、女性の政治家が極端に少ない、「女医」さんも少ない、今日の日本の状況につながっていることに、あの展示を見て気づくことができるのだろうか。そんな薄っぺらい芸術にはどんな芸術的な意味合いがあるというのであろうか。

 

「田舎の貧しい無学な女子を教育して、金儲けの種にする方法」「女たちを黙らせてアート性を高めて男性社会の潤滑油にする方法」を学ぶには、あの展覧会は、いい機会かもしれない。

 

お客さんには、明らかに風俗嬢と思しき若い女性も多く見かけた。他に、彼女らの送迎車の運転していそうな男性、ソープランドの受付をやっていそうな男性、自身の行いを正当化したい願望を根底に持つ風俗客の男、落語家、絵描き、大学教授風、中高年の一般女性、お客さんのバラエティも富んでいた。

 

皆、表面的なことに満足して、男性たちから、「汚い話(生理とか避妊とか子宮とか)の話をするのは、下品で野暮」と言わされていることに、何とも思わないのか、松本人志的な男性社会に脅されるがまま、従ってしまうのだろうか。

 

展示の冒頭に田中優子氏のコメントがあった。

「これほどの文化の集積地と誕生の地が、なぜ性の売買という基盤の上に成り立っていたのでしょうか?それなしでは、このような時空が生まれなかったのでしょうか?そのことを日本文化の抱える問題として考え続けなければなりません。」

ワタシはこの文言をそのままジャニー喜多川とそのファンたち、エンタメ業界人たちに投げかけたい。ワタシは、決してそんなことはないはずだと強く思う。女性の気持ちを聞かないから、女性たちに何も語らせないから、男性たちだけに任せるから、そんな世界になるのだと思う。

 

田中氏はおばあさまが「待合(貸座敷)の女将」をされていたので、性売買や男性優位社会をどこか美化したいお気持ちがおありになるものと推測される。そのような方がどれほど「性売買は女性の人権侵害」とは言っても、あの展示内容では多くの人にとっては馬耳東風で伝わらないであろうと思った。

 

なお、展示内容はすべて3500円の分厚い図録に載っているので、買って熟読する価値はあると思う。現地に行くより安いし。

図録・グッズ|大吉原展