ネコヤマンガ

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ROTTEN-REJECTIONS-Andre-Bernardまことに残念ですが: 不朽の名作への不採用通知160選

面白い本を読んだ。絶版である。図書館でお探しいただきたい。I read an interesting book. It's out of print. I would like you to look for it in the library.

その中から、印象に残った部分をご紹介する。

作家バーナード・ショーのメモ書き

「わたしが最初の本を書きあげたのは、今から七六年前である。当時、英語圏にある名の知れた出版社全部に原稿を送ったが、片っぱしから断られた。それが活字になったのは、その五〇年後、出版社がわたしの名前が書いてあればどんなものでも出版するようになってからだ・・・・・・・。

わたしは編集者に反感を持っている。連中がわたしの役に立ったのはただひとつー彼らを頼らずにやれと教えてくれたことである。

連中は商売人の狡猾さと、芸術家なみの怒りっぽさ、気むずかしさを兼ね備えているが、決して立派なビジネスマンでも、文学のよき批判者でもない。よって、わたしはこう結論する。本を売るのに必要なのは著者と書店だけだ。寄生虫の仲介はいらない。」
イギリスのミステリー作家サイモン・ブレット(一九四五~)のメモ

「お定まりの通知以上のものとして覚えている唯一の断り状は、六〇年代後半、断られて当然という小説を性懲りもなく、さる編集者に送ったときの返答である。彼はこう書いてきた。「あいにくですが、フィクション市場の現状があまりに気の滅入るものであるため、あなたにも希望を与えることがかなわないのです」

じつに巧妙な断り方だと感心した。わたしの作品にまったく可能性がないということを十分明白に伝えながら、原因がわたしの無能さにではなく、むしろほかにあると奥ゆかしくほのめかしているのである。」

※代表作『あの血まみれの男は誰だ』(早川青房)
This extraordinary collection of rejection letters sent by publishers to writers - many delivered to now famous authors of books considered classics - is sure to entertain and delight readers and give more than a little comfort to struggling authors. Among the gems of editorial misjudgement included in the book are: 'You are welcome to Le Carre - he hasn't got any future.' (The Spy Who Came in from the Cold, 1963); 'It is impossible to sell animal stories...' (Animal Farm, George Orwell, 1945); and 'We are not interested in science fiction which deals with negative utopias.' (Carrie, Stephen King, early 1970s). In the company of such hallowed names as Thomas Wolfe, Gertrude Stein, Henry James, Joseph Heller and many others, Rotten Rejections makes encouraging reading for all would-be authors.


アメリカの小説家ジョン・ガードナー(John Gardner1932~82)のメモ

「編集者をいい人間だと思いたい気持ちは猛然と振り切るべきである。あの連中は全員、ただ一人の例外もなく、…少なくともある程度は、無能かクレイジーかのどちらかだ。職業がらどうしても本を読みすぎ、その結果ぐったり疲れきってしまい、自分のすぐ目の前で躍っている才能にも気がつかない。」


アンドレ・バーナード( 編著者。この本の著者)の言葉

・この本の原稿は、最初に見せた出版社ですんなり受け入れられた。拒絶にあったのは、出版されてから。

・業界のさる重役は、過去の失態について口にするのさえ拒み、そもそもこの企画からして「編集者に失礼にあたる」とうなり声をあげた。

・もう一人は、担当編集者のヘンダースンと私が明らかにタチの悪い誇大妄想の末期症状にあり、そのため編集者は決して過ちなどおかさないという錯覚に陥っているのだろうと指摘した。「いったい何様だと思っとるのかね、きみらは一度も判断を誤ったことがないというのか?」と。

「じつは、本書で取り上げた手紙のなかには、われわれがあちこちの出版社に勤務していたときにみずからの手でしたためた断り状も含まれている。あれほど自信を持ってはねつけた本が書店の棚を埋めつくし、じわじわ版を重ねつつあるのを見るたびに、わたしたちは口惜しさに身悶えしている。」


文芸評論家の木原武一氏のあとがきより。

・編集者というのは、自分が思っているよりもはるかに保守的な人間である

・彼らの頭の中にある名作とは過去の名作であり、その枠からなかなか出ることができないために、作品の新しさの価値を見抜けない。

・しかし、編集者にも言い分はある。たいていの編集者は著者との交渉や企画の立案、原稿の整理などで忙しく、無名の著者の持ちこみ原稿にじっくり目を通して適切な判断を下す余裕がない。

・また、かりにすばらしい作品だと思っても、売れなくては出版できない。そもそも、ものごとにたいして「正しい判断」が下されることはきわめてまれなことなのである。

 

ワタシはこの一文で思わず涙した。この頃私は、建物疎開中に被爆した広島の中学生たちの被曝体験を読んでいた。


ジョージ・ギッシング

「ただひとつはっきりしているのは、私が静寂と瞑想の生活を送るように生れついているということだ。五十年あまりの生活が私に教えてくれたことは、地上に暗影を投じている誤認と愚行の大部分は、魂を平静に保ちえない人びとに基因するということ、さらにまた、人類を破滅から救いだす力の大部分は、静かにものを思う生活から生じるということである。

日ましに世間は騒々しくなってゆく。せめて私だけはその騒音の激化に一役買うのをやめたいと思う。」

 


共感した。